めも1

「よお電斗。」
私がこいつに声をかけたのはある用事があるからだった。
「・・・また面倒ごとを押し付ける気か?」
うぐっ、鋭い。
さすが腐れ縁なだけはある。
「まあたまにはいいじゃん。」
「いつもだろ、今週だけで2回目だ。」
こいつは無駄に記憶力高いからな。
本当よくそんなこと覚えてるよな。
「実は今月おかね足りなくてさぁ・・・。」
そう、ほしいティーカップを買って金欠になってしまった。
「なんでもするから、ねっ、お願い!」
「だめだ。」
本当石頭だよなぁ。
とか言ってると部室にあの女も入ってきた。
「おつかれー、何やってんのー?」
こいつは炎道、うちの部の副部長だ。
明るい茶髪で元気な奴だがこう見えて実家は神社らしい。
私から見てもすごく美人で黙っていれば完璧な奴だ。
だが馬鹿でとても騒がしいすごく残念な性格をしてる。
「あっ、私はテストの補習で遅れちゃってさー。
10点だったけどまあいっか。」
ほらな。
ちなみに私は40点だ
「実は金欠でさ、ちょっと貸してほしいんだよね。」
週末には漫画も買いたいし近いうちに紅茶も買う予定だ。
お小遣いを貰うまでに欲しいもの全部買うには誰かに借りるしかない。
「私もお金なくてさー。」
たぶん私と同じような成り行きでお金がないのだろう。
だからと言ってしっかりしてそうな電斗に限って貸してくれないしな・・・。
「じゃあ一緒に会長に借りに行こ!」
確かに持ってはいるだろうがあいつに借りるのは癪だな。
まあそんなことも言ってられないか。
「しょうがないよね、じゃあ借りに行こうか。
電斗は来客対応しといてくれ。」
というわけで生徒会室へと出発した。
部室を出るときに
「なんだこいつら・・・。」
という声が聞こえたのは気のせいだろう。

 

「ゆいちゃん、遊びに来たよー!」
「・・・うぃっす。」
私たちが生徒会室に入るとそこには会長だけがいた。
「おっ、麗華っちとマオじゃん。
おひさー。」
こいつは瀬川唯。
チャラいように見えて結構まじめな奴だ。
そのせいで私にあーしろこーしろうるさく言ってくる、はっきり言って苦手な奴だ。
「今お茶用意するねー。
2人とも先座ってて。」
私たちは来客用のソファーに座って周りを見渡した。
部屋の手前側は整理整頓されてて奇麗なのと対照的に置く側は書類の束が山積みだ。
その処理をするなんて面倒くさいことよくやるよな。
などと考えていると2人分のティーカップが運ばれてきた。
中にはキンキンに冷えた紅茶がたっぷりと入っている。
「おまたー、そういえばこの前のテストどうだった?」
うっ、いやなことを聞いてくるな。
「40点だ・・・。」
「私は10点だよー!」
気のせいかな、私たちの点数を聞くと瀬川の表情がさっきより曇った気がする。
「もー、だから普段から10分でもいいから復習しなって言ってるのに。
私なんか95点なんですけどー。」
「はいはい、95点の人が入れた紅茶すごくおいしいですー。」
「またそんなこと言ってー。
今度勉強教えてあげよっか?」
「面倒くさいからパス。」
などと言い合ってる間に麗華は紅茶を飲み干し
「そういえばさ、私たちにお金貸してほしいんだよねー。」
と割って入った。
そうだった、それ目当てで来たんだった。
「えー、お金の貸し借りはちょっとねー・・・。」
くっ、露骨にいやそうにされてしまった。
外見と中身が正反対だな、いや私もか・・・。
「頼む瀬川。
1万円ずつ貸してくれ。」
「お願い!」
こんなに頭を下げて頼んでも瀬川は
「はぁー!?なんですけど!!
なんでこんな悪びれもしない不良生徒たちにお金貸さないと駄目なのって感じ!」
さすがに図々しかったようでかなり怒らせてしまった。
そりゃそうだよな。
よし土下座するか。
「頼む1000円だけでもいいから!
一生のお願い!」
さすがにここまでされると怒りも収まったようだ。
「・・・これからはホントに部活も勉強もちゃんとやる?」
「やるやる!」
「わーったわーった!
貸すから頭上げて。」
やった、瀬川はお人好しで助かった。
横を見るとさすがに麗華が少し引いていた。